COLUMN
2024.10.5
オアシスのシングル盤アートワーク秘話~オアシスの世界観を見事にジャケットに刻み込んだ、強烈なヴィジュアル・アイデンティティ。
オアシス:祝・再結成&デビュー30周年記念でこれまでに発表したすべてのシングルを完全網羅した超貴重な7インチ・シングル・コレクションBOXが発売となることが発表されました(Vol.1は10/30 & Vol.2は11/13)。
日本のファンのための日本独自企画、前半はレッド、後半がブルーのカラーヴァイナルで、まさにオアシス版「赤盤」「青盤」です。
特典はなんとギャラガー兄弟のアクリル・スタンド!
昔からオアシスのシングル盤のジャケット大好きでした。どれも本当に素晴らしいんですよね。
ビートルズやピンク・フロイドなどのジャケットと並び称されていいくらいの、イマジネーションを掻き立ててくれる、これぞ“アート”といった作品で、思わずコレクションして、並べたくなっちゃうような、素敵なデザインばかりです。
初期から97,8年頃までのアートワーク制作は、クリエイティブ集団Microdotのブライアン・キャノンがデザインを手掛け(あの象徴的なロゴも彼のデザインです)、マイケル・スペンサー・ジョーンズが一連の写真を撮影しています。オアシスの世界観を見事にジャケットに刻み込み、強烈なヴィジュアル・アイデンティティを打ち出したのが彼ら。
でも、さすがオアシス、その一つ一つに様々な秘話があって、「物語」があるんです。
今回はシングル盤のアートワークについて、いくつかを紹介したいと思います。
●「Some Might Say」
オアシスのシングルの中で最も素晴らしいデザインと思うのが、1995年に発表、初の全英シングル・チャート1位を獲得した「Some Might Say」。
ノエルは「この曲の歌詞をすべて1つのイメージで表したものにしたい」というお題をブライアン・キャノンに出し、“駅で到着することのない列車を待っている人たち”というコンセプトを元に、意味深な歌詞に登場するキャラクターを駅のホームに配置しています。
ロケ地はマンチェスターの南東100キロに位置する、ダービーシャー州のマットロックという小さな村の南端にあるクロムフォード駅。駅舎の後ろの橋の上で手を振っているのがリアム。プラットホームでジョウロで水を撒いているのがノエル。
ちなみに手押し車を押しているのはブライアンの父親で、モップを持っているのは彼の母親。犬はケビン・コスナーの映画にも登場したことがあるそうです。
マイケル・スペンサー・ジョーンズが、モノクロのフィルムで撮影、約2週間かけて彩色し、シュールでイイ感じのレトロ感を醸し出しています。素晴らしい世界観ですね。
●「Wonderwall」
クリエイション・レコーズの事務所があったプリムローズ・ヒルの公園で、女性の姿を額縁で切り取ったこのジャケット。
元々はリアムの写真が使われるはずだったものの、「Wonderwallはラヴ・ソングであり、女性についての曲だから」とノエルが却下。
最終的に額縁の中の女性はクリエイション・レコーズで働いていたアニタ・ヘリエットさんが起用されています。これがリアムだったら全然印象が違うジャケになっちゃったでしょうね。
ちなみに額を持って写ってる手はブライアン。構図に合うようにずっと持っていなければならなかったので、シビれる撮影だったそうです。
●「Don’t Look Back In Anger」
このジャケットはビートルズへのオマージュ。
1968年『ホワイト・アルバム』のレコーディング中に、リンゴ・スターは自分が必要とされていないと感じてビートルズを一時的に脱退します。その後最終的にバンドに復帰するよう説得され、アビー・ロード・スタジオに戻ったら、メンバーがドラムセット全体に花を飾り待っていた・・・。
というエピソードからノエルはアイデアを思いつき、なんとカーネーションをオランダから何千本も輸入して、そのうちの一部を青く染め、ユニオン・ジャックの色である赤、白、青の花を飾りつけ撮影したのがこの名曲のジャケット。いい話ですよね!
●「Live Forever」
一番最初のコラム でも書きましたが、これはリバプールのジョン・レノンが幼少期に住んでいた家。
ノエルは「プライド、若さ、そして自分が何者であるかを知ることについて歌った曲なので、それにふさわしいジャケットにしてほしい」とリクエスト。
フォトグラファーのマイケルが以前に撮影したジョンのメンディップスの家の写真を思いついたそう。
赤外線フィルムで撮影された、幽玄な質感が「Live Forever」の歌が持つ普遍性にぴったりハマったヴィジュアルに。単なる郊外の普通の家の写真だけど、そこに誰が住んでいたかを考えると、より力強い物語性を帯びてきますよね。ま、当然とは思いますが、特にリアムのお気に入りだそう。
●「Whatever」
このジャケもいいですよね。「俺は何にでもなれる 思いのままどんなものにでも」という曲のイメージにぴったり!
ノエルは広大な風景をジャケットに使いたかったそうで、当初の計画ではバンドが初のアメリカ・ツアーを行っている間にアリゾナの砂漠(モニュメント・ヴァリー)で撮影する案があったそう。
ところが・・・LAでツアーは中止になってしまい撮影計画が頓挫。結局、イギリスに戻ってから撮影場所を探すことに。
ストーンヘンジにも近いソールズベリー平原は?というアイデアが浮かびロケハンに行ったところ、うっかりイギリス軍の実弾射撃練習場に使っている地区に入り込んでしまい、危うく爆破されそうになったとのこと(笑)。
何万キロもの探索の旅の後、結局、最終的に行きついたのが地元マンチェスターに近い、シェフィールド郊外のハラム・ムーアー。でも、どこまでも草原が広がっているこの雄大な風景と空の色、なんて素敵なジャケットに仕上がったんでしょう!
30年たっても色褪せないオアシスの楽曲。アートワークにもその普遍性が表現されているんです。
曲とヴィジュアルが一体となった、オアシスのヴィジュアル・アイデンティティ。アートワークというものがその作品の一部であることがわかりますよね。
ただ、その裏ではノエルの無茶ぶりを具現化した、デザイナーとフォトグラファーたちのクリエイティヴィティとこだわりと血と汗と涙の結晶でもあったわけです。
●ブライアン・キャノン
1990年にMicrodotを設立。オアシスの90年代にリリースされたほとんどの作品のアートワークを手がける(98年の『The Masterplan』まで)。オアシスの象徴的なボックス・ロゴのデザインも彼の作品。また、ザ・ヴァーヴ、スウェード、キャスト、アッシュ、スーパー・ファーリー・アニマルズなど、他のアーティストのアートワークも手がける。
●マイケル・スペンサー・ジョーンズ
オアシスの最初の3枚のアルバム『Definitely Maybe』、『Morning Glory』、『Be Here Now』と、初期のシングルスリーブ11枚のジャケット写真を撮影。 また、ザ・ヴァーヴとも仕事をし、彼らの1997年の名作『Urban Hymns』のフロント・ジャケットを撮影した。
オアシス展では、彼らの作品の数々も含む、「Some Might Say」「Don’t Look Back」などのポスターや、「Whatever」は展示物として大きなキャンバスになって飾られます。
アートとして、当時も今も“カッコイイ”オアシスのジャケット柄のポスターがずらりと並ぶ展示コーナーは圧巻、壮観です!そして、ポスターはすべてが当時の現物!是非お楽しみに。
フロントだけでなくバックカヴァーやレーベル面他、すべてにこだわりあげているオアシスのアートワークの世界観、是非シングル・ボックスでチェックしてみてください。
●オアシス|コンプリート7インチ・シングル・コレクションBOX Vol.1
●オアシス|コンプリート7インチ・シングル・コレクションBOX Vol.2
詳しくはこちら:https://www.sonymusic.co.jp/artist/Oasis/info/567414