TICKET

COLUMN

2024.9.6

俺達の「Live Forever」~なぜ「Live Forever」がオアシス展のタイトルとなったのか?

1994年にリリースしたデビュー・アルバム 『オアシス (原題:Definitely Maybe) 』からちょうど30周年となる記念すべき年に、なんと奇跡の再結成ツアーが発表!びっくりしましたね!!
UKツアーのチケットは争奪戦になっているようですが、僕も日本時間の8月31日(土)17時にトライしてみたものの、チケット購入ページの直前のウェイティングルームに入った時にはなんと16万人待ち!?ある時点では30万人待ちという時もあったようで・・・。

争奪戦を勝ち抜いてゲットできた皆さん、おめでとうございます。チケット購入できなかった方も沢山いると思いますし、UKまで行けない方も沢山いると思います。
でも、ここ日本ではオアシスのデビュー30周年を記念した展覧会 『Live Forever:Oasis 30周年特別展』 が11月1日 (金) より六本木ミュージアムにて開催されます。
こんな最高に盛り上がっているタイミングで、今一度オアシス展で彼らの30年を振り返り、彼らの世界に浸ってみるのはいかがでしょう?

今後いろんな小ネタをこちらに投稿して行こうと思いますが、まずはオアシス展のタイトルにもなっている「Live Forever」について。

「Live Forever」 は、デビュー・アルバムからの第3弾シングルで、作詞・作曲はノエル・ギャラガー。オアシスにとって記念すべき最初の全英トップ10シングルとなりました。 ノエルは、当時のニルヴァーナを代表とするグランジ・シーンの “悲観的でネガティブな性格” へのレスポンスとしての思いを込めたと、かつて下記のようなコメントをしています。

“死ぬほど才能があるあのクソ野郎(カート・コバーン)が、俺がほしかったもんを全部持ってやがったんだよ。金持ちで有名で、あの頃トップに立ってたロックバンドで音楽やってて。しかも自分のことが嫌いだとか、死にたいとかいう曲を書いてんだぜ!俺としては、俺は自分のことをファッキン愛してるし、永遠に生きてやる(Live forever)って思ってたね”

この曲はグランジ全盛期にニルヴァーナの「アイ・ヘイト・マイセルフ・アンド・ウォント・トゥ・ダイ」を聴いて、「キッズ達はあんなくだらないものを聴く必要はない」と感じたノエルが書いた曲と言われていますが、でも、単純に“永遠に生き続けようぜ”なんていう、単なるポジティブなだけの希望的観測、楽観的、賛歌的なものじゃないんですよね。
最悪な経験はいっぱいしたし、貧しくて、未来がどうなるか、うまくいくかどうかなんて全くわからない状況だけど、しっかりと自分の現状と向き合いながらも、「生き続ける」ことこそが大切なんだと。

「Live Forever」はファンの間でも、最も愛されている曲の一つ。あらゆる人が自分自身に置き換えられるような、誰もが共有できるような想い・・・多くの皆さんが、この曲に救われて、前向きな気持ちになれた、とも語っています。
ノエルの歌ですけど、それぞれの、一人ひとりの「自分自身の歌」に成長していっているんですよね。

歌詞の中で最もグッとくるのがこの一節。

「Maybe you’re the same as me, We see things they’ll never see」
(お前も俺とおなじだろ、俺たちにはあいつらには見えないものが見えている)

この「俺たちにしかわからない一体感」を感じる一節にみんなドキュンとやられてしまい、「世の中のクズ側」に振り分けられていると感じていた当時の若者たちの間で永遠のアンセムとなっていくんですね。
80年代から続いていた、失業率が高くて未来に希望を持てなかった英国で、サッカーしか楽しみがない“しょーもない若者”の代表みたいなバンドがドーンと出てきて、どんなにスターになっても「いつまでも俺たちの側」にいて、愚痴らず、ボヤかず、ストレートに大声でカッコよく歌う。その姿にその時代の若者たちがゾッコンになり、「俺たちのオアシス」「私たちのオアシス」という存在へとなっていくわけです。

ドキュメンタリー映画「Live Forever」 のライヴ映像でノエルは「Live Forever」を振り返り、ナレーションでこう語っています。

“「Live Forever」 を書き終えた時ーーロックスターになる野望が爆発した。インディーズバンドだった俺たちを 「Live Forever」 が世界一のバンドに押し上げたんだ。あの曲ができた時、これはインディーズなんかじゃなくて、とんでもなく最高な曲だって確信した。歌詞もメロディーもシャウトも何もかも完璧で、俺にとって特別な曲だ。 “自分たちには価値がある”、そう思えるようになった・・・“

この曲は英<ラジオX>が毎年行っている “英国史上最高の楽曲” を決めるリスナー投票で、今年2024年に1位を獲得。これまでにも2018年、2021年、2023年、そして2024年と、4度の1位を獲得しています(2019年と2020年はクイーンが1975年に発表した 「ボヘミアン・ラプソディ」 が1位。2022年はSam Fender’の「Seventeen Going Under」)。
https://www.radiox.co.uk/news/music/live-forever-oasis-named-radio-x-best-of-british-2024

また、この曲は「未来」を向いた曲として解釈されることが多いと思いますが、過去を振り返り、亡くなった人々への「追悼」を捧げるような側面もあるんですね。
この曲のシングル盤のジャケットにはジョン・レノンが幼少期に住んでいたリバプールの通称メンディップスの写真が使用されており、ミュージックビデオのUSヴァージョンでは、カート・コバーン、ジョン・レノン、ジミ・ヘンドリックス、ブライアン・ジョーンズ、ジム・モリソン、マーク・ボラン、シド・ヴィシャス、そしてこの曲が発表される約1年前1993年に51歳という若さで亡くなったサッカーのイングランド代表選手のボビー・ムーアなどの写真が散りばめられています。
当時のオアシスのコンサートでもスクリーンに彼らの敬愛する亡きアーティスト達の写真が映し出されることも多かったようで、近年ではノエルのソロの日本公演でも、2023年11月30日に亡くなったポーグスのシェイン・マガウアンに捧げて、この曲を演奏しています。

●Oasis – Live Forever (Official Video – US Version)
https://www.youtube.com/watch?v=6qTPl5Do8mQ

●Oasis – Live Forever (Official HD Remastered Video)
https://youtu.be/TDe1DqxwJoc?si=CShehj_wQmdezs80

あたりまえのことですが名曲というものは、ひとつの解釈だけじゃなくて、時代によって、環境によって、聴く人の想像力によって、より深く、幅広く、自由に解釈できることが素晴らしいんですね。

彼らの歌が時代を超えて、世代を超えて、様々な人々の心へ届き、色褪せず、愛され続けている・・・今もなおオアシスのファンが増殖し、彼らの曲が若い世代にも聴き継がれているのは、どの世代にも共感・共有できる歌の力があるからなのでしょうね。

“名曲には名曲たる理由がある。”

そんなことを改めて思い出させてくれるオアシスの名曲中の名曲。「Live Forever」―――まさにファンの皆さんが抱く“俺たちのオアシス”“私たちのオアシス”への想いを象徴するような言葉。だからこそ、この言葉が今回のオアシス展のタイトルに選ばれたわけです。