COLUMN
2024.10.11
オアシス新ロゴ物語。
11月1日よりスタートする六本木ミュージアムにて開催される『リヴ・フォーエヴァー:Oasis 30周年特別展』のプレスリリースに合わせて発表されたのがバンドの新ロゴ。今回はこのいきさつや秘話など「オアシス新ロゴ物語」をご紹介したいと思います。
デザインを手がけたのは国内外で活躍するアーティスト、河村康輔氏。オアシスにとって初の日本人アーティストの起用、ってかなり画期的なんです!
元々はデヴィッド・ボウイの2013年のアルバム『The Next Day』がアイデアの原点だったそうです。最も象徴的な作品ともいえる名盤『Heroes』(1978年作品)のジャケット・デザインを、シンプルなタイトルのみが入った白いスクエアで覆い隠すという斬新なデザイン。この作品でグラミー賞を受賞したデザイナーのジョナサン・バーンブルックはこう語っています。
「私たちは過去を忘れたり消し去ったりしたくても、過去から完全に決別することが不可能であることを誰もが知っている。それでも、絶えず過去を置き去りにしながら、次の日に向かって生きていかねばならない。それはそれ以外に選択肢がないからだ。そういったことをこのアートで表現したかった」
オアシスもデビュー30年を迎えましたが、いまだに新たなファンが増殖し、曲は人々の心に時代を超えて永遠に生き続けています。90年代のバンドとしては稀有な存在で、60年代から80年代の懐古的にとらえられるバンドとも全く一線を画していますしね。
過去を振り返るだけではなく、全く新しいものとして受け入れられているオアシスに、このデヴィッド・ボウイの『ザ・ネクスト・デイ』の精神を重ね合わせた、新たなアート的なアプローチをここ日本発信で何かできないか?ということがオアシス展の一つのテーマとなっていきました。
そこで生まれたのがオアシスの新ロゴを日本で作っちゃおうという大胆なアイデア。そう、これ、なかなか普通じゃ通らない、かなりチャレンジングな企画です。
そんな中、AKIRA他一連の仕事で世界的にも有名な、ジャパニーズ・コンテンポラリー・アーティストの河村氏に出会います。そのアイデアに河村氏も共感し快諾。日本発のオアシス新ロゴ制作という大胆なプロジェクトがスタートします。河村氏の作品は、シュレッダーで裁断したものを、自らの手で一つ一つを貼りつけて、もう一度組み上げ再構築していくというアート。AKIRAの一連の作品とともに、近年ではCASIOとの仕事も有名。
今回のオアシスの新ロゴは、まずはこれまでに何種類もある通称“デッカ・ロゴ”からイメージを膨らませ、デジタルでデザインしてから、モックアップをいくつも作るという、かなり時間も手間もかかる作業。試行錯誤の中、デビューの頃の「最初」の“デッカ・ロゴ”と、『ドント・ビリーヴ・ザ・トゥルース』の頃の「最後」の“デッカ・ロゴ”を組み合わせたものを、河村氏がベストと判断し、遂に日本側の最終デザイン案が決定します。
ただ、当たり前ですけど、最大の難関はオアシス側との許諾作業。なんといってもバンドのアイデンティティを表現するロゴですから一筋縄ではいかない交渉となるのは目に見えていました。河村氏の名前はロンドンのオアシスの事務所側も知っていて、アイデアやコンセプトについては事務所側も非常に興味を持ったが、ただ、最終的な返答は・・・
「兄弟に見せて、2人がNoって言わなきゃね。」
予想通りのお答えです。そりゃそうですよね・・・本人たちがどう判断するか?それよりも2人に行きつくまでにどれだけ時間がかかるのか?もはや運を天に任せるしかない状況です。でも、もう後戻りはできません。日本側の最終デザインとともに、このロゴへと至る「物語」をノエルとリアムに提示しようということに。
しかし、結果は驚くほど早く来たんです。ノエルとリアムは速攻で送ったロゴ・デザインを見てくれて、そして、見た瞬間に許諾をだしたとのこと。前回のコラムにも書きましたが、特にノエルのジャケット・デザインへのこだわりを考えると即答でNGという可能性もなきにしもあらず・・・奇跡的とも言えます。でも、新ロゴのコンセプトは、実はこれまでにオアシスがデビュー以来行ってきたヴィジュアル戦略に合い通じるものがあったのではないかと思うんです。
— Oasis (@oasis) August 25, 2024
オアシスはデビュー直後から今に至るまで、バンドのイメージを世間に浸透させるのにミニマルなグラフィック・キャンペーンを行ってきました。必要最低限の情報のみ、アイコニックなグラフィックのみで展開、それによってファンが自由に想像力を掻き立てられるように余地を残す。この秀逸な手法は15年ぶりになる今回の再結成でも同様の路線を踏襲しています。そして、そのロゴはバンドのイメージを世間に浸透させる大きな要素でした。
今回の新ロゴは「誰もが持っていたイメージを一度打ち壊して、新たなものを創造する」、そんなコンセプトがデビューから30周年となった今年、新たなる再出発する彼らにぴったりのイメージだったのではないでしょうか。彼らが敬愛する、時代とともに変化し続けたデヴィッド・ボウイにも通じるヴィジュアル・コンセプトが彼らの感性にピタッとはまったんですね。
紆余曲折あったものの、こうして、日本人デザイナーが手掛けた史上初のオアシス新ロゴが誕生することになりました。新ロゴの元になったオリジナル・アートの現物は『リヴ・フォーエヴァー:Oasis 30周年特別展』で展示されます。
今回の30周年ロゴを手掛けた河村康輔と写真家Jill Furmanovskyによる企画展「Oasis Origin + Reconstruction」が東京・神保町New Galleryにて開催されることが決定しました。
ジルが撮影した1994年から2009年にかけてのオアシスのドキュメンタリー写真と、オアシスのロゴやアルバムジャケット、ポートレート写真などを大胆に再構築した河村康輔によるコラージュ作品が展示、販売されます。
更に「Oasis Origin+Reconstruction」限定のOasis × Jill Furmanovsky × 河村康輔オリジナルグッズもございますので、ここでしか見られない、オアシスのこれまでとこれから。是非ご覧いただければと。