TICKET

COLUMN

2024.11.13

オアシスの全てを知り、彼らに最も近い男~デビュー当時からのマネージャー、マーカスからオアシス展へメッセージ

現在開催中の『リヴ・フォーエヴァー: Oasis 30周年特別展』。すでにたくさんの方に足をお運び頂いておりますが、オアシスのバンドの歴史において最も重要な人物のひとり、デビュー前から長年に渡りマネージャーを務めてきた、オアシスの表も裏もその全てを知り、彼らに最も近い男ともいえるマーカス・ラッセル(Marcus Russell)さんから日本の皆さんへメッセージが届きました。再結成決定後、最新のコメントです。

「バンドの素晴らしい音楽アーカイブを、ビッグ・ブラザー・レコーディングスを通じ、さらに2025年に世界各地で予定されている見逃せないライヴ・パフォーマンスを通じて、長年に渡り新たな世代の音楽ファンへ届け続けられることを大変光栄に思います。そして、今回日本で行われる展覧会では、彼らの堂々とした姿勢、仕事に対する熱意、そして常に自分たちや他人を笑い飛ばせるユーモアを感じとってもらえると嬉しいです」

マーカス・ラッセルさんはウェールズ出身、Ignition Managementを立ち上げ、ザ・スミス解散後のジョニー・マー、ニュー・オーダーのバーナード・サムナー、ザ・ザなどのマネージメントを経て、1993年デビュー前のオアシスのマネージメントを引き受けます。無名のバンドを世界最大のバンドのひとつへと変貌させた最大の功労者ともいえる重要人物。2009年にオアシスが解散した後もノエル・ギャラガーのマネージメントを続け、ノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズを大成功に導き、いまもなお、ビッグ・ブラザー・レコーディングスでオアシスの作品の数々のアーカイブをまとめ、今回の再結成にも大きく関わっている御方。そんなマーカスさん、日本で開催されるオアシス展へ向けてのメッセージとともに貴重なお話を聞くことができました。

*マーカスさんに贈呈されたトリプル・プラチナ・ディスクも展示されています。

マーカスさんとオアシスとの物語の始まりは、ジョニー・マーに誘われて見に行った地元マンチェスターでのライヴ。最初に出会った時をこう回想しています。

「初めて彼らに出会ったのは1993年春、マンチェスターの“ホップ&グレープ”というパブでのライヴだった。観客は少なかったものの、彼らは自信と実力を見せつけ、素晴らしい音楽の影響を感じさせる見事な演奏を聴かせてくれた。すべてがシンプル、自信に満ち溢れていた」

彼は初めて見たオアシスのライヴにスレイド、セックス・ピストルズ、キンクスを感じたそう。そして、その翌日ノエルから電話がかかってきて、バンドのマネージャーになってくれないかと依頼されます。ノエルは「電車賃をくれれば、2時間後にロンドンへ行くよ」と言って、その3時間後メリルボーンのカフェで会い、デモ・テープを渡され・・・そこからすべてが始まりました。

その後、あれよあれよという間に成功への階段を彼らとともに昇りつめていくことになるわけですが、マーカスさんが本当にオアシスがとんでもない存在になっていくだろうと確信した瞬間はいつのことだったんでしょう?こんな答えが返ってきました。

「彼らの重要性を本当に実感したのは、初めて会った時から約1年後、1994年6月のグラストンベリーフェスティバルで、午後のセカンドステージで演奏していたときだった。すでに他のバンドとは一線を画していることが明らかで、その瞬間、観客全員が熱狂していたのを今でも鮮明に覚えている。その時から彼らは全く止まらずに突き進んでいった」

ノエルはセカンドステージの客席の真ん中辺にあるミキシングボードのあたりまでお客さんがきてくれたらいいな、なんて話していたそうですが、ライヴが始まるとあっという間に後ろの後ろまで埋め尽くされたそう。そして、まさにその日、全英チャートで「シェイカーメイカー」が11位に入ったという情報をマーカスもバンドもステージで聴いたとのこと。ここが「確信」の瞬間だったんですね。

その後、8月にデビュー・アルバム『Definitely Maybe』、翌1995年『(What‘s The Story)Morning Glory?』、1996年8月にはネブワースで25万人を動員・・・マーカスさんが「確信」した瞬間からわずか2年足らずです。

そんな時代を象徴する出来事や名曲の誕生する瞬間に幾度も立ち会った彼が、オアシスの素顔について意外な一面も語ってくれています。

「彼らの凄さはすべてにおいて常に自分たちがコントロールしていること。どれだけ大きな存在となり、お金が入ってきても、人気が出ても、彼らは常に状況、パフォーマンス、そしてクリエイティヴィティをコントロールしていた。いろんなことを言われるが、ライヴのバックステージでは、他のバンドと比べると、比較的リラックスしていることが多く、緊張感はほとんど感じられなかった」

デビュー以来30年に渡り、オアシスが世代を超えて愛されるバンドになった理由は何なのか?そのことについてはこう語っています。

「彼らはリアルで、自然体で、何のフィルターもかかっておらず、もちろん非常に才能があった。若い世代の音楽ファンが求める、自主性を持ったヒーローとして、彼らに語りかけているからだと思う」

そして、マーカスさんにオアシスNo.1ソングは?という質問をぶつけてみると

「難しい質問だね。たくさんあるので、常に変わるけど…今のところは「Up in the Sky」のMonnow Valley Versionかな。1993年後半に録音されたこの曲は、その当時からすでに彼らが幅広い魅力を持っていたことがよくわかる。この曲は30年経った今でも新鮮に聴こえ、今もリピートして聴いている」

実はこの「Up in the Sky」は先述したマーカスさんがオアシスのライヴを初めて見た翌日、ノエルと会ってマネージャーを依頼された際、ノエルが渡したデモ・カセットの中に入っていた曲なんです(「Whatever」もその中に入っていたそう)。

日本で現在絶賛公開中の『リヴ・フォーエヴァー: Oasis 30周年特別展』、そのキーヴィジュアルとなった新しいバンド・ロゴについてまず相談した相手はマーカスさん。最後に日本人デザイナー河村康輔さんのデザインについて聞いてみた。

「とても良いね。クラシックなデザインをクールかつ現代的にアレンジしてくれて、すごく気に入ってるよ」

バンドが2009年解散するまでの15年間共に歩み、バンドが成功を収めるのを目の当たりにし、一生の思い出になるような素晴らしい夜がいくつもあった・・・素晴らしい時間を過ごせたことには大満足だった、とも語っていますが、唯一彼が心残りなのはアメリカでの業績だったのではないでしょうか。解散して15年、再結成ツアーを発表後、USツアーも発表になり、スタジアム級の会場がすべてソールドアウト。マーカスさんがバンドと出会ってから夢見て邁進していた真の意味での世界制覇が、来年遂に実現するのではないでしょうか。

Ignition公式サイト
https://www.ignition.co.uk/